「現実」よ、あんたはそんなに偉いのかい。

  十数年前に小泉内閣が登場してから、この国の姿は激変しました。個人の幸福よりも国家の利益を優先しようとする政治家たちは、やれ行政改革だ、規制緩和だなどと耳障りのいい言葉を国民の耳元に並べ立ててきました。そしてその連中の決まり文句はこうです。「現実を見ろ」。
  しかし果たして「現実」が人間のすべてでしょうか。今を生きる自分にとって、「二十年前の現実」と「昨夜の夢」の意味の違いがどれほどのものか、我々は厳密に説明できるでしょうか。彼らの言う「現実」が肩を怒らして跋扈すればするほど、その「現実」は検証されなければなりません。その検証の手段として最も効果的なものが「非現実」です。
  「なぜ傘を差しているのだ」という問いに「雨が降っていないからだ」と答える別役流のパラドキシカルな非現実観は、現実を鵜呑みにしている我々に、それを吐き出させる力があります。「非現実」を突き付けることによって、絶対的地位の上にあぐらをかいている「現実」にゆさぶりをかけなければなりません。文学や芸術の、それが使命です。
  と偉そうな事を言ってはみても、平凡な日常に埋没して生きて来たボクとしてはやはり日常というものから逃れる事はできません。ボクが書くのは、社会の片隅に生きる凡庸な男女の姿です。別に意識するわけではありませんが、どうしてもそれはユーモラスな人間像になってしまいます。一所懸命と滑稽は紙一重なのでしょう。ただ、笑って済ますのではなく、いわば「日常の波にのまれた魂が非日常に生まれ変わる」。ボクの創作姿勢の根本にあるのはそういうものです。先月、一年間毎日連載したユーモア小説「クラウディライフ」が完結しました。これは「曇りがちな人生」を送っている、年齢も性別も違う四人の男女の話です。普通の人が送るささやかな生活の中にこそ生きる意味はあると思っています。
  ありふれてある生身の人間が言葉と肉体で日常と非日常を往来する。今回の芝居ではそんな舞台を作って「現実」を検証していきたい、そう考えています。
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by morioka007 | 2014-04-29 16:26 | 演劇


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